AI対応SAPデータ

SAPと信頼できるAIの間に欠けているレイヤー

テクノロジー   |   Ian James氏   |   2026年7月29日 読了時間の目安:5
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世界トップ100社のうち99社がSAPを利用しています。これはビジネスの要であり、オペレーションを円滑に維持するために誰もが信頼を寄せるシステムです。その信頼は、十分な実績に裏付けられたものです。SAPは極めて綿密に設計されています。それだけ多くの業務やシステムがその上で動いていることを考えれば、それは当然のことです。

しかし、その強みこそが、AIを活用しようとする企業にとって大きな課題にもなっています。SAPシステムは設計上、高い保護性を備えています。それらを運用しているチームはそれらを保護しており、SAP自体も自社のデータを保護しています。それは当然のことです。事業を支える基幹システムを危険にさらしたいと考える人はいません。しかしその一方で、SAPから意味のあるデータを取り出すことは容易ではありません。

なぜSAPの生データはAIと相性が良くないのか

AIの働きは、その基盤となるデータの品質に左右されます。これは新しい考え方ではなく、私たちが長年信じ続けてきたことです。しかし、組織全体でAIモデルやAIアプリケーションの活用が進む今、その重要性はかつてないほど高まっています。

SAPをご利用のお客様にとっては、SAPのテーブルを抽出してデータレイクに格納し、そのままAIモデルに読み込ませれば済むという話ではありません。その段階では、AIにはコンテキストがありません。AIはその数値がなぜ存在するのか、どのように算出されたのか、また、その背後にどのようなビジネスロジックがあるのかを理解していません。

AIにそこまで自由を与えれば、何らかの答えは返ってきます。しかし、その答えは信頼できるものではなく、経営陣の前で自信を持って説明できるようなものでもありません。

これこそが、AI対応データの本当の意味です。単にSAPからデータを取り出すことではありません。SAPデータをガバナンスに基づいて抽出し、そのビジネス上の意味を維持したまま、ユーザーが信頼できる形で分析やAIワークフローへ提供する仕組みが必要です。

前処理が本当に行われる場所

DVW Analyticsは、単にデータベースレベルで接続するのとは異なるアプローチを採用しています。DVWのAlteryx Connector for SAPは、SAPの業務用フロントエンドツールと同じように、SAPアプリケーションレイヤーを介してSAPに接続します。

つまり、すべてのユーザーはSAPを通じて認証され、SAP自身が権限確認や各種チェックを実行し、組み込まれた安全対策もそのまま維持されます。私たちは、早い段階からSAPのガードレールを迂回するのではなく、その仕組みを活かして構築するという方針を採用しました。そのため、500社を超える企業が自社のSAP権限の範囲内で当社のコネクタを利用しています。

その実用的なメリットは、ビジネスユーザーが単なるテーブルの生データではなく、実際のビジネスコンテキストやビジネスロジックを反映したSAPレポートからデータを取得できることです。これは単なる生データとは比較にならないほど価値の高い出発点です。

Alteryxにデータが取り込まれる時点で、最も手間のかかる作業の大半はすでに完了しています。あとは、他のデータセットと統合し、データをクレンジングし、AIソリューションが効果的に活用できる形へ整えるだけです。私たちは、「SAP内にあるデータ」と「AIで活用できるデータ」とのギャップを埋めることを使命としています。そのため、お客様のチームが前処理レイヤーを一から構築する必要はありません。

実際の運用ではどうなるか

私たちがお客様向けによく構築する代表的な事例の一つが監査ワークフローです。これは、コンテキストがなぜ重要なのかをよく示しています。

例えば、仕入先の請求書を監査したいとします。当社のコネクタは、SAPから実際の仕訳データと、サプライヤーが提出した請求書原本などの証憑としてアップロードされたPDF文書を直接取得します。

しかし、どちらか一方だけでは十分ではありません。その仕訳データには何が記録されたのかが示されています。そのPDFには実際に提出された内容が記録されています。これらを組み合わせることで、Alteryxは、記録された内容と証憑が示す内容との不一致を、人手では対応できない規模でも自動的に検出できます。

また、この仕組みは当初からAIのユースケースとして構築されたものではありませんが、AIとの親和性は非常に高いものです。クリーンで整合性が取れ、適切なガバナンスが確保されたデータが利用できるようになれば、静的なダッシュボードの代わりにAIを活用することは、ごく自然な次のステップとなります。AIはすでに信頼できるデータを活用するための、新たな手段の一つとなるのです。

真に提供すべきものは信頼

Alteryxはデータエンジニアだけでなく、ビジネスユーザーにも使いやすいプラットフォームとして高い評価を築いてきました。しかし、SAPデータをその環境へ取り込むには、これまでは専門的な技術者が必要になることが一般的でした。私たちは、自社のツールもその期待に応えられるものにしたいと考えました。キャンバス上に配置し、Tコード、クエリ、HANAビュー、Fioriアプリなど、すでに使い慣れた方法でデータを取得し、複雑な技術作業を意識することなく利用できるようにしたかったのです。

しかし、本当に重要なのはそこではありません。AIが約束していた価値は、単に分析を高速化することではありませんでした。それは、大規模でありながら、より優れた意思決定を実現することです。そして、その価値は出力結果の根拠となるデータを人々が信頼できて初めて成り立ちます。

SAPをご利用のお客様にとって、その信頼はAIを導入する以前から始まっています。それは、データへのアクセス方法やデータの準備方法にあり、システムに組み込まれたビジネスコンテキストを維持することから始まります。重要なのは、ミッションクリティカルなシステムを迂回する近道ではなく、そこから最新の分析基盤やAIワークフローへとつながる、体系化された道筋をユーザーに提供することです。

だからこそ、私たちはAI対応のSAPデータを、単なる「クリーンなデータ」とは考えていません。それは、適切なガバナンスが確保されたデータです。それは、ビジネス上の意味を持つデータです。それは、単にエラーなくモデルに読み込めるデータではなく、ビジネス部門が内容を理解し、その正当性を説明できる形で抽出・整備されたデータなのです。

この前処理レイヤーを適切に整えれば、AIはもはや脇に置かれた実験的な存在ではなくなります。AIはSAPデータを基盤とし、DVWによって整備され、Alteryxによって価値を引き出す、皆様がすでに信頼しているビジネスプロセスの自然な延長となるのです。

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