財務責任者なら誰もが知っているであろう、ある瞬間があります。ある数字を取締役会資料や決算説明会、監査委員会に提出しようとする直前に、ふと立ち止まる瞬間です。その数字がどこから来たのか、そして算出方法を尋ねられても筋の通った説明ができるのかを確認したくなるのです。何がその数字を算出したかにかかわらず、この一瞬のためらいは生じます。
この感覚はデータにも表れています。Gartnerが200人以上のCFOを対象に実施した調査によると、財務責任者が掲げる2026年の最優先課題を達成する自信は平均約63%でしたが、全社的にAIの効果を生み出すことへの自信はわずか36%にとどまりました。
財務責任者が全般的に自信を欠いているわけではありません。コスト管理や成長への投資には自信を持っています。自信が大きく低下しているのはAIに限られます。これは、社外に提出される個々の数字よりも幅広い観点で測った指標ですが、同じ傾向を示しています。財務責任者が普段なら容易に持てる確信を、いまだに持てない唯一の分野がAIなのです。
すべての数字がクリアすべき4つの条件
この一瞬のためらいは瞬時に行われるチェックのようなものです。数字を信頼する前に、次の4点を確認します。
- どこから来た数字なのか
- 簡潔に説明できるか
- 何度実行しても同じ結果になるか
- 尋ねられたときに、元のデータまでさかのぼれるか
ほとんどの財務責任者は、こうしたチェック項目を明文化したことがありません。これまでは明文化する必要がほとんどなかったからです。数字を算出するシステムには通常、十分な信頼性があり、この確認作業が実際の問題に発展することはほとんどありませんでした。
AIはこのチェックを必ずしもクリアできるとは限りません。AIは知識の確かな根拠がない場合であっても、ほぼあらゆる問いにもっともらしい答えを生成できます。そして、その背後にあるロジックが確かなものであっても、でっち上げられたものであっても、答えの見た目に違いはありません。これこそが、AIに対する自信が低い本当の理由です。
財務責任者は、AIが役立つことを疑っているわけではありません。その答えに異議を唱えられたとき、自ら説明できるかどうかに不安を感じているのです。財務責任者がすでに確認している4つの要素は、「可視化可能(visible)、理解可能(understandable)、再現可能(repeatable)、監査可能(auditable)」の4つの言葉、すなわちVURAに集約されます。この4つの言葉は、財務責任者が本能的に確認してきたことを簡潔に表しています。
その背後にあるロジックを管理するのは誰か
ただし、チェック項目に名前を付けてもそれをどこに適用するかという問題は解決しません。そのためにはロジックそのものがどこに存在するのかという、より難しい問いに答える必要があります。決定論的なロジックは財務部門が定義するものであり、AIが推測するものではありません。モデルは差異についての解説を作成したり、予測を要約したり、再確認すべき異常を検出したりすることができます。
何を例外とみなすか、収益をどのように認識するか、どの閾値でエスカレーションするかをAIに判断させるべきではありません。これらは財務部門が判断することであり、AIの役割はその判断に従って処理し、説明し、一貫して適用することです。判断材料が不十分なときに独自のルールを作り出すことではありません。
財務分野でAIに失望する原因の多くは、実はこの区別にあります。通常、モデルは得意な処理に失敗しているわけではありません。問題は、その前の段階で起きています。必要なロジックが誰にも定義されていなかったため、AIが推測し、その推測を正しい答えとまったく同じ確信度で提示してしまうのです。出力だけを見ても、その違いはわかりません。
まさにその違いを見極めるのが、4つの質問によるチェックです。その数字がどこから来たのか、説明できるか、何度実行しても同じ結果になるか、元のデータまでさかのぼれるかを確認すれば、AIが財務部門の定義したロジックを適用したのか、それとももっともらしい答えを生成しただけなのかを、すぐに判断できます。
基準をワークフローに組み込む
これは、ガバナンス上の判断であると同時にアーキテクチャ上の判断でもあります。企業の生データと、それを利用するAIとの間にデータを準備し、財務部門が管理するロジックを保持し、すべての出力をデータとロジックの両方にまで追跡できるレイヤーがあれば、この4つの質問に簡単に答えられます。
それがAlteryxの担う役割です。Alteryxは、推論を行うモデルと競合するものでも、データが格納されているERPやEPMシステムに取って代わるものでもありません。Alteryxは、モデルに渡される情報が財務部門の承認に耐えうるものとなるようにするビジネスロジックレイヤーです。その結果、モデルの出力も財務部門が信頼できるものになります。
この仕組みを組み込むことで、数字を外部に出す前の一瞬のためらいが持つ意味も変わります。その数字が検証に耐えられることを願うのではなく、毎回、実際に耐えられることを確認できます。4つの質問への答えがワークフローにあらかじめ組み込まれているため、記憶を頼りに後から再構築する必要はありません。
実際のワークフローでこの仕組みがどのように機能するのかを具体的に確認したい方は「AI対応スターターキット」をご覧ください。これは特定のビジネスユースケースにAlteryxを適用する方法を紹介する、構築済みのAlteryxワークフローと合成データセットです。データを準備して構造化し、分析に活用できる出力を生成します。その出力は大規模言語モデルなどの外部AIツールを使ってさらに拡張できます。
財務責任者がAIを信頼することにためらいを感じる理由を理解するのは、第一歩にすぎません。次のステップは、AIが活用できる信頼性の高いビジネスロジックを備えたガバナンスの効いた基盤を構築することです。
『信頼できる金融AIの構築』では、AI対応の財務ワークフローを支える原則と実践的な手順について詳しく解説しています。
